事件、現象、自然災害……モノクログラビアを中心に展開された50年分のニュース記事をピックアップして伝える新コーナー。初回は、1980年代のアイドルブームを語る上で欠かせない「親衛隊」の青春に迫ったページをお届けします。

 

末期症状は“プロ”になっちゃうこと

1982年、秋。芸能界は異様な熱気に満ちていた。この年は小泉今日子、中森明菜、早見優など、後の芸能史に刻まれる逸材が続々とデビュー。年末の賞レースに向けたデッドヒートが熾烈を極めつつあった。もちろん、争うのはアイドルだけじゃない。彼女たちの私設応援団である親衛隊もまた、「俺たちのあのコにひとつでも多くの賞を取らせよう!」と、しのぎを削っていたのである。

アイドルもファンも最高潮に盛り上がっていた、そんなタイミングで掲載されたのがこちらの記事。16個の親衛隊に密着し、隊員たちの熱狂ぶりを彼らの証言とアイドルとの記念写真を通して伝えている。

そもそも親衛隊とはどんな存在なのか? ある隊員の証言から拾ってみよう。

親衛隊ってのはさーやってて何が嬉しいのかってゆーとおおよそ3つのパターンがあるみたいね。まず単純なファンの延長上にあるよーな“他の一般より密接になれる“たまにお話ができちゃう”ことがたまんない人。まー初心者よ。

次にビョーキが進むと“スタッフっぽい”のが嬉しくなっちゃう。コンサートのお手伝いしたり会場整理も苦にならないわけね。将来は芸能プロに入りたいなんて危険な思想を持つコはこのタイプ。

末期症状としては“親衛隊のプロ”になっちゃうみたいね。別にそれでメシを喰えるわけじゃないけど そーゆー組織を作ったり運営してくのがビジネス的に好きになっちゃうのがいるみたい。困ったもんだぜ ジッサイ。

親衛隊はメンバーの多くが高校生や大学生を中心とした十代で、最盛期には数千人が所属する大規模なものまであった。主な“お勤め”は公開番組やコンサートを盛大なコールで盛り上げること。統制を図るため、毎週末に厳しい練習が各地で行われた。日夜、テレビやラジオのランキング番組にリクエストを送ることは当たり前。悪質な追っかけやカメラ小僧からアイドルを守る、ボディガードの役割を自主的に行うこともあった。

 

俺は複雑な恋をしてるのだ

 「隊」と名のつく通り、親衛隊には時間の厳守やアイドルへの口の利き方など様々な規律が定められた。中でも要注意とされたのは、アイドルへの接触だ。個人プレイは絶対にご法度。破った者には体罰が与えられることもあったという。

ではなぜ、そこまで厳しい環境にあっても親衛隊としての活動を続けてこられたのか? 隊員の次のような証言に、その答えの一端が垣間見える。

ハッキリ言って親衛隊はハカナイ。フツー考えるように「あーいいな 彼女と親しくなれて」みたいな世界ではないのだ。惚れた女がいて そのコが兄貴と結婚して一緒に住むようになってしまったみたいな世界なわけだ 分かりやすく言うと。

なまじっか近くにいるばっかりにマスマス遠い存在であることを認識してしまうとゆー もう純文学を一人背負うわけ。「あー俺はとても複雑な恋をしてるのだ」とゆー思うが 親衛隊の魅力でもあるわけ。

「わしゃあ親分さんのためやったら 命も捨てますけん」とゆーコワい世界も背負ってたりして こりゃ 日本人の永遠の美意識かね。ハチマキとか統制なんてコトバが ちょっとヤバい気はするんだけどねーー。

アイドルとファンの距離が、今では想像もつかないほど遠かった時代。ファンの代表とも言える親衛隊の存在が、彼女たちをスターの座に押し上げる大きな原動力になった。ちなみに、このページが掲載された1982年にデビューしたアイドルは後に、「花の82年組」と称され、今や伝説としてアイドル史に語り継がれている。

推しのアイドルと写真に収まる親衛隊の隊員たちは、ちょっぴり緊張しながらも満面の笑みを浮かべている。アイドルとファンの距離が今では想像もつかないほど遠かった時代。もしかすると、この16枚の写真は“複雑な恋にはかなく生きる”親衛隊に向けた週プレからのプレゼントだったのかもしれない。

 

登場したアイドルと親衛隊(ページ順)
小泉今日子&今日子隊、河合奈保子&奈保子隊、石川秀美&秀美隊、中森明菜&明菜隊、新井薫子&薫子隊、伊藤さやか&さやか隊、早見優&優隊、石川ひとみ&ひとみ隊、川島なお美&なお美応援団、三田寛子&寛子隊、水野きみこ&きみこ隊、堀ちえみ&ちえみ隊、つちやかおり&ファン・クラブ・ピックアップメンバー、パンジー&パンジー隊、柏原よしえ&よしえ隊、伊藤つかさ&つかさファンクラブ熱烈メンバー

*本記事の引用文は一部の名前を除き、掲載当時のままで使用しております。

1982年9月14日号

 

文/大野智己

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