アヌードブームが巻き起こり、数々のスクープグラビアが連発された1990年代。週プレの巻頭グラビアにもヌードが掲載されることが増え、同時に多くのヌード写真集が出版されて話題を呼んだ。また長年、時間をかけて撮りためた写真を丁寧にまとめた写真集のヒットも見逃せない。ヌードものと、時間をかけて編んだもの。90年代はこのふたつの視点からBEST5を選んでみたい。

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編集S 90年代、特に前半はヌード写真集が活況でした。篠山紀信さんが撮影した樋口可南子のヘアヌード写真集(『water fruits』)がブームの火付け役になったと言われています。

編集O 確かに、あの写真集から雪崩をうったように各社からヘアヌードを謳った写真集が乱発しましたからね。無名の女のコでも初版が3万とか。今では考えられない部数が当たり前でした。

編集C どちらかと言うと、週プレはその流れに対して冷静でしたよね? 巻頭グラビアをヌードが飾ることが増えても、これまでやってきたグラビア、女優やアイドルの水着をしっかりページにしていました。

編集O ヘアヌードブームの後にイエローキャブを中心とした、いわゆるグラビアアイドルの時代がくる訳じゃないですか? 週プレがそこに強かったのはきっと、ブームに踊らずにグラビアを”守った”からだと思います。

編集S 大枠の話はこれくらいにして、具体的な作品に触れていきましょう。5位は辺見エミリのセルフポートレート。かなり挑戦的な作品です。

5位 辺見えみり『EMIRIGRAPH』(1998年3月発売) 撮影/辺見えみり

編集C 使い捨てカメラの「写ルンです」でプライベートをすべて記録するという試み。入浴や寝起きなど、際どいシーンを自らが撮影する。スタジオのヌード撮影も自分でシャッターを押す。要は見せ所をすべて自分で決めてしまうという。

編集O 露出的に守ろうと思えば守れるけど、出し惜しみはなし。撮影を本気で楽しんでいるからこそ、セットアップされたグラビアとは違った生の魅力があります。

編集S 個人的には90年代特有の写真の匂いを感じますね。あの時代、半径5メートルの世界というか、手が届く身の回りの人や光景を収めた写真が人気だった。特徴的だったのが、「写ルンです」で撮りっぱなしたような粒子の粗い写真です。女性写真家で例えば、HIROMIXさんや蜷川実花さんの作風がそれでしたよね。彼女たちからの影響も少なくないと思います。

編集O 当時、アデランスのCMや『スーパーJOCKY』のMCなどお茶の間の知名度も抜群でしたから。写真集の内容はもちろん、単純に裸の衝撃は大きかったはずです。

 

4位 小柳ルミ子『小柳ルミ子』(1991年9月発売) 撮影/立木義浩

編集C 次にいきましょう。4位は小柳ルミ子のヌード写真集。副題に「格子戸をくぐりぬけ少女は――大人になった」とあります。芸能生活20周年を記念した函(はこ)入りの豪華版です。

編集O カバーには「一度地獄を見た女は強いのよね」の一文も……。ダンサー・大澄賢也とのスキャンダルがワイドショーをにぎわせていた頃に出版されました。

編集S 彼も同作にガッツリ出演して脱いで絡んでいますから。

編集C 普通の写真集を想像してページをめくると火傷します(笑)。踊って、キスして、絡んで、飛んで……一枚一枚に絵力があるというか、写真の強度がとにかく高い。

編集O 後背位で絡むカットがありまして、ふたりの表情がなんとも絶妙。賢也の目なんて悪魔的に光ってますから。言葉じゃうまく説明できない、写真だけが持ちえる楽しさ、おかしさを堪能できる一冊です。

 

3位 八木小織『春夏秋冬』(1994年11月発売) 撮影/大村克巳

編集S 3位は八木小織の『春夏秋冬』です。発売が決定した直後には、編集部に「脱がないで!」の声が殺到したとか。

編集O CMやドラマに主演する清純派のアイドルでしたからね。水着グラビアの展開はありましたけど、いきなりのヌードにビックリした記憶があります。

編集C 元々はカメラマンの大村克巳さんが「作品を撮りたい」とアプローチして動き出した企画だった。マネージャーもメイクもスタイリストもいなくて、ふたりだけで密かに撮影を進めて、仕上がった250枚の写真が編集部に渡されて写真集になったとか。

編集S インタビューを読むと以前から大村さんの作品を知っていて、彼に撮られるんだったら脱いでも……という思いがあった。個人的な作品が日の目を見ることはなかなかないけど、彼女が主導して事務所を説得して編集部に繋いだそうです。

編集C 写真集発売を告知した週プレ本誌は、彼女の顔のアップにバカボンのパパのイラストが沿えられて「これでいいのだ。」のキャッチコピー。50年の歴史の中でも、後世に残したい表紙のひとつです。

 

2位 石田ゆり子&石田ひかり『きせき1987-1996』(1996年10月発売) 撮影/中村昇

編集O 続いては2位。石田ゆり子と石田ひかり、石田姉妹の10年間を追った写真集です。

編集C 10年間という歳月をかけて作る写真集は滅多にない。過去の写真を再録してベスト版的に見せるものは多々ありますけど、10年間、ためにためた”新作”ですから。

編集S これができちゃうのが、週プレの底力じゃないですか? そもそも姉妹ふたりのグラビア自体が珍しかったし、ふたりともソロで表紙巻頭を飾る人気があった。どの出版社も写真集を出したかったはず。

編集O やっぱり中村昇さんの存在が大きい。社員カメラマンという立場で事務所と密に付き合えたことで大きな信頼関係を築くことができた。多くの写真集を手掛けた中で、中村さんは特に印象深い一冊だと話しておりました。

編集C 無邪気に笑う少女が徐々に大人になり、比例して姉妹という関係も変化していく。姉、妹、ひとり、ふたり……いろいろな視点で味わえる作品。表紙カットの絶妙な距離感が、何ともいえないふたりの関係を表している気がします。

 

1位 桜子『桜子:写真集1986-1993』(1994年4月発売) 撮影/平地勲

編集S 90年代の1位に推したいのが桜子のヌード写真集。これも8年の歳月をかけた労作です。

編集O 桜子、と聞いてピンとくる読者は少ないかもしれないけど、週プレ50年間のグラビア史の中でも忘れちゃいけない女のコのひとり。84年にデビューした直後にいきなりヌードを披露して人気に。元祖・ヌードルと呼ぶべき存在で、本当に可憐だった。

編集C 80年代後半には何度も表紙を飾っています。日本的な顔立ちとはアンバランスな巨乳と透き通るような白い肌。グラビアの世界だけにしか存在しないような、謎めいた美少女でした。

編集S 引退、改名、復活を繰り返して94年に完全引退。写真集はそのタイミングに合わせて発売されました。

編集O 石田姉妹の作品にも通じるものがありますね。肉体の変化だけじゃなくて、年齢を重ねるごとに変化する心情の機微がしっかり写っている。

編集C この作品はドキュメンタリー視点で眺めると味わいがまた変わってくる。カメラマンの平地勲さんはその時々で目の前にいる被写体を、まっすぐ見ようとしている。美しいだけじゃなくて、迷いや汚れすら受け止めてありのままを撮ろうと。

編集O ヘアヌード全盛のこの時代に、週プレは彼女と共にあったとも考えられるのかもしれない。一過性のものではなく、引退して名前を変えて復活してもその都度きっちり撮影して関係を残して、完全引退のタイミングで写真集を発売する。

編集S 間違いなく90年代を代表する一冊だと思います。

編集O 90年代はヌード写真集がBEST5のうち4つを占めました。改めてヌードの時代だったと実感できますね。その中で、桜子を1位に挙げられたことは週プレのグラビアをふり返る上でも大きな意味があると思います。

編集C 今こそ、こういった試みをやるべきですよね? 裸を追い続ける意味と価値を、改めて考えていきましょう。

 

1位 桜子『桜子:写真集1986-1993』(1994年4月発売) 撮影/平地勲
2位 石田ゆり子&石田ひかり『きせき1987-1996』(1996年10月発売) 撮影/中村昇
3位 八木小織『春夏秋冬』(1994年11月発売) 撮影/大村克巳
4位 小柳ルミ子『小柳ルミ子』(1991年9月発売) 撮影/立木義浩
5位 辺見えみり『EMIRIGRAPH』(1998年3月発売) 撮影/辺見えみり

 

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